2022.01.14
今回インタビューさせていただいたのは、代々こんにゃく芋を作り続けている「小山リビング企画」の小山昌丈(こやま まさたけ)さん。
元々は新聞社で働いていたそうですが、「プロになりたい」という思いから、実家のこんにゃく芋作りの修行を始められたとのこと。こんにゃく芋は、葉に傷が付いただけでも病気になってしまうほどデリケートな作物。そんな作物を育てることに挑戦している小山さん。
そこには
・自然を相手にすることの難しさ
・作物を育てることへの喜び
・東吾妻の可能性への想い
・群馬ブランドへの想い
がありました。
自然を相手に、日々何を感じ、どのように向き合っているのか?
本インタビューでじっくり語って頂きました。
※小:小山さん、イ:インタビュアー
イ「まず、お仕事の内容についてお聞かせください。」
小「うちは代々続くこんにゃくの専業農家で、メインはこんにゃく生産になります。冬に土作りをして春に植えて、夏に土壌と畑の管理をして、11・12月が収穫期というサイクルです。メインは農業ですが、こんにゃくの加工・販売も行っており、6次産業化しています。私はそのいずれもやらせてもらっています。」
イ「ホームページで製作工程も拝見したのですが、生芋から商品を作るのには結構時間がかかるのですか?」
小「機械化出来る工程もあり、多分全国の9割ぐらいのこんにゃく加工業者さんは機械化して作っています。機械で作ると、1度こんにゃくの芋を砕いて粉にしてそれを水につけるという感じで、比較的簡単に作れます。
ただ機械化しますと、こんにゃく本来の風味・歯ごたえ・味の染み込みなどに若干差が出るので、うちは昔ながらの、こんにゃく芋から直接作る『生ズリ製法』でやっているので、そこに大きな差があります。」
イ「そこが差別化されてるポイント、オリジナルな手法ということですか?」
小「そうですね。もう『生ズリ製法』で作っているのは、本当に本当に少ないと思います。大変なんですよ。『生ズリ製法』だと1日かかるのです。朝に芋を洗って、皮を丁寧にむいて、ミキサーにかけてペーストにして、ちょっと寝かせて、午後から形成作業となると1日かかる。粉から戻せばあっという間に、1/2・1/3の労力でできますから、大量生産、薄利多売が出来るようになります。」
イ「そこはちゃんとこだわりを持って、時間をかけて作っているわけですね?」
小「そうですね。やっぱり本物・リアルなこんにゃくを追求していきたいですし、無添加・無着色で作っているので、そこはこだわりたいですよね。そのおかげか芸能人の方も買いに来ますし、テレビにもよく取り上げられます。」
イ「どうして今の仕事を始められたのですか?」
小「地元の東吾妻が好きなことが1番大きいですね。私、群馬県から1度も出たことがなくて、高崎市に住んだり桐生市に住んだりしてきたのですが、でもやっぱり東吾妻町のこの『ザ・田舎』が好きで。
幼い頃から自分の家で作った、超新鮮な野菜を食べていたからか、スーパーで買ったものはなんか味が薄かったり感じるんですよ。でも東吾妻町のふきをもらったり、下仁田町のネギをもらったりとか、昭和村の人からレタスをもらったりすると、やっぱりすごく美味しい。
子供達も野菜の味には敏感です。「これ苦い」とか「甘くない」って言って。それで色々な農家さんの所を回らせてもらったのですが、本当にこだわりを持って作っている農家さんは、沢山エネルギーを注いでいるから美味いんだな、と思いまして。これがプロフェッショナルじゃないですか?
それで自分も『何かでプロになりたい!』と思って・・・プロフェッショナルになりたいと考えた時に、父がこんにゃくに関しては、農林水産祭の天皇杯というのを取っていまして、正にプロフェッショナルなんですよ。
どこに行っても「小山です」って言うと、「小山農園さんのところの子供かい?」と言われるぐらい。そういうのもあって、近くに良い教師がいるんだなぁって改めて認識しました。
子供もいるので『食の安心・安全』をしたいという思いもあったので、まずは修行で今の仕事をしています。」
イ「修行を始められてどれぐらいになるのですか?」
小「3年目です。家を継ぐことはまだ頭に無いというか、まず5年ぐらいやってみて、自分がやれるかどうか、父にも認めてもらえるかどうか、というところを試したいなと思っています。」
イ「修行はいかがですか?」
小「いやー、大変です。毎年必ず同じ作物はできないんですよ、絶対に。あの父でさえもできない。
例えば、去年ちょっと貯蔵温度が高かくて、コンニャク芋の目が伸びちゃったんですね。それが1ミリ2ミリの世界なんですけど、それによって成長が早くなって、畑に植えた時にうまく大きくならない。本当に1・2週間の1・2℃の温度管理が欠けるだけでもダメになってしまう。
父は朝起きると必ず温度計を見に行きますし、家に帰って来ても時間を決めて必ず温度を見ています。多分30年ぐらいずっと帳簿につけていてデータを持っている。それでも同じものは出来ないんです。
でも、毎年同じものができないので、そこが面白い部分でもあります。
『生き物と会話する』じゃないですけど、葉っぱを見てちょっと肥料が足らなかったかなぁとか、そういうのは感じますね。1度植えたら葉っぱの色が出るまでは、もう止められないじゃないですか。だから、もう怖いですね。毎年絶対同じにならないので・・・面白いです。」
イ「かなりシビアな世界だということが伝わってくるのですが、それを面白いと思えるのは良いですね!」
小「小さい頃から自然が好きだったんです。勉強するよりも山に行って、魚やウナギ、カブトムシやクワガタを捕まえたりするほどの野生児でした。熊の足跡を見ると最近歩いたなとか大体分かりますし、ヘビを見つければ逃げないで絶対捕まえていました(笑)」
イ「ものすごくパワフルですね(笑)」
小「東吾妻町が、田舎の環境が私を作ったと思いますよ、本当に。」
イ「修行をしている中で1番大変だったことは何ですか?」
小「やはり『自然が相手』ということですかね。天気は毎日変化するじゃないですか。それに対してどうこんにゃくにアプローチしていくか。でも、正解がない。父に聞いてもわからない!?教えてくれない!?。答えが無いので、掘ってみるまで分からない。
だけどそれを考えて、天気予報とにらめっこしながら、今打てるであろう1番最善の策を考えて・・・なので、答えが無いのが1番大変だと思います。本当にどうしたら良いんだ!って。
昨日も畑から芋を収穫したのですけど、ものすごい量の腐敗した芋が出てしまって。父が作ると大体1つの畑に2・3個なんです。でも昨日は500個ぐらい出て。何故なんだ?って父に聞いたら『あまり良い天候の時に植えなかった、土がしけているときに植えたからだ』って。それに加え、植えるときに機械で植える所を作るんですけど、それが普通より1cmぐらい深かったんです。それで水が抜けなかったらしく・・・」
イ「お父様は分かっていたのですか?」
小「ちょっと深いかな?とは思ったらしいです。私が植えるところを作ったときに「ちょっと深いぞ」とは言われました。パートのおばさんも分かっていて「今回ちょっと深いよ」って。春先にそう言われていたから、どうなのかなあって昨日楽しみに畑に行ったら、全然ダメでしたね。」
イ「さすがですね。やっぱり経験値には敵わないのですね。」
小「本当にすごいですよね!パッと見て大体分かるので。う
ちは手押しの機械で植える所を作っていまして、レバーで深さを調整するのですが、調整しても深くなったかな?といった感じで。加えて土の柔らかさもあるので、深さとかさっぱり分からないですね。それで1cmとか言われても・・・父は『お前、掘っているうちに分からないのか?』って言うのですけど、いや分からねえよ!って(笑)」
イ「それは難しいですね(笑)でもパートの方々もすごいですね。植える瞬間に深いよって分かってらっしゃるとは。」
小「ええ、だからもう私が居なくても全部出来上がりましたから。1番長いパートの人で30年ぐらい。27年の方もいますし。なので私なんかより全然上。本当に日々勉強ですよ。答えがないのが1番大変ですけど・・・それが面白いです。」
イ「楽しかったことや嬉しかったことを聞いても良いですか?」
小「それは植えたものにちゃんと手をかけてあげれば、『こんなに大きくなるの!』っていうぐらい大きくなることですね。他の野菜もそうだと思いますが、そのときはものすごく嬉しいです。
こんにゃくの芋に、小指の先ぐらいの次に植える小さな玉が出るのですが、例えば1個の芋に3つぐらい付いていたら、『ああ、大きく育ってくれたんだなぁ』『腐っていなくてよかった、来年もまた植えよう!』みたいな。それを植えて翌年収穫して、また植えてというのを繰り返し、3年後にやっと原料になる芋になるんですが、そこまで育ったら本当に嬉しいです。1回失敗すればもうダメなんで。本当に怖いんですが・・・だからこそ面白いというか嬉しいというか。」
イ「すごいですね!小山さんのお話には元気をもらえます。」
小「いやいや、私もへこたれていますよ。サラリーマンとちがって責任が全部自分に返ってくるので。」
イ「辛さと向き合う秘訣みたいなものはあるのですか?」
小「私は子供が好きなので、子供3人に向き合うときは一番頑張れます。自分がやらないと子供達を食べさせていけないので、そこだけは、嫁と子供だけは絶対に守るぞ!って。」
イ「東吾妻町の良いところは何だと思いますか?」
小「私は東吾妻が大好きなので、ものすごくいっぱいあると思います。まず、役場がお城っていうのが面白いですね。そして役場の裏から岩櫃山に登れて、忍者体験が出来るのも面白いと思います。あと『東吾妻は何もない』って皆さん言うのですけど、逆にそれが魅力だなって思って。」
イ「それインタビューする皆さんが言われますが、やはりそう思いますか?」
小「だって何もないってことは、これから何でも出来るんですよ!
何もないからこそ出来ることがある!何でも良いんです。小さいことでも良いんですけど・・・畑1枚新しく作ったでも良いですし、工場が1個出来たでも良いですし、公園が1個出来たでも良いんですけど、何にもないからこそ出来ると思うので。
そして全国から色々な人が来るような町になって欲しいと思います。可能性が満ち溢れている、そこらじゅうに可能性がある町だと思うので。道1本でも新しく作れば変わりますし。不便をメリットに変えてほしいですよね。」
群馬が世界一
イ「最後に、今後の展望や夢などがあればお聞きしてもよいですか?」
小「うちのコンセプトは『安心・安全・本物』なので、それを継承していきたいですね。
まずは全国の皆さんが『こんにゃくは群馬だよ』と言ってもらえるようにしたいです。そして20年・30年・50年後には、世界中の人が『こんにゃくは群馬だよ』と言って欲しい。「日本」じゃなくて「群馬!」ですね。まあ、ゆくゆくは東吾妻って言ってほしいですけど(笑)
こんにゃくは群馬ブランドなので、そこを守りたいです。人生何年生きるかは分かりませんが、80歳ぐらいまでには、『群馬と言えばこんにゃく』『こんにゃくと言えば群馬』『群馬が世界一』って言ってもらいたいですね!」
「食の安心・安全・本物を守りたい」
「50年後には群馬のこんにゃくを世界一にする」
そのようなアツい想いを胸に、日々試行錯誤されている小山さん。インタビューさせて頂いて、私は小山さんから元気をもらいました。その理由は小山さんのポジティブな捉え方・考えにあると思います。
「答えがないからこそ、面白い」
「大変だからこそ、嬉しい」
「何もないからこそ、何でもできる」
一見マイナスに見えることであっても、捉え方を変えるとプラスになる。そのようなことを教えていただいた気がしました。
小山さん達が信念を持って作るこんにゃくは、数々の賞も取っていて、芸能人の方も御用達です。
「本物のこんにゃくを食べてみたい!」
そう思ったら是非、「小山農園(小山リビング企画)」にお立ち寄りください。
<小山農園(小山リビング企画)>
〒377-0804
群馬県吾妻郡東吾妻町岩井849-2
電話:0279-68-3681
HP:http://www.koyama-nouen.com/