ロックなヒト

育苗の専門家から農家への転身:新規就農者永田さんの挑戦

新規就農者である永田さんは、以前は種苗会社で苗作りに専念していました。その経験を通じて、自らの手で最後までやりたいという想いから、農家を志すことになりました。

農業に興味を抱いていた永田さんは、当時から苗の成長に興味津々で、その経験が彼にとって農家へ転身するきっかけとなりました。

多くの人に手伝ってもらいながらも絶えない苦労の中、新規就農者として感じたことを伺わせていただきました。

地域に新しい風をもたらしている独自の視点と努力に迫ってみたいと思います。

(永:永田祐也  イ:インタビュア)

育苗から農家へ

イ:新規就農して3年目と伺っていますが、以前は種苗会社にいらっしゃったそうですね。

永:元々は種苗会社の苗作り専門に所属していて、いつのまにか自分でも出荷までやりたいなと思って農家を志すことにしました。

イ:当時から、農家に興味があったのでしょうか。

永:その時は「この苗がどうなっていくのか」っていうのは、結構気になっていました。

イ:苗から入ることで他の農家さんにはない強みもありそうですね。

永:苗は作れるんだけど、収穫や出荷などは別。みんな、苗7割とかはいうけど、実際はそんなに簡単ではありませんでした。

イ:農家になろうと思ったきっかけはあるのでしょうか。

永:きっかけは、以前の仕事で事故をした時に会社を辞めることになってしまって。
会社と話し合いをした上で、どうせ辞めるのなら一から農家になろうと思ったのがきっかけでした。

イ:始めると言っても、農地や農機具が必要になるじゃないですか。その目処はあったのでしょうか。

永:正直に言えば、始めた時は農地の目処とかは立っていませんでした。
でも、地域の人に相談してみたら「ここが空いているよ!」とか、教えてくれる人も多くて。
色々な人に助けてもらったことで農地に関しては苦労せずにすみました。

その後、二年間くらいナス農家を手伝わせてもらったので、入りはナスでした。
ナスの他に何かメインの作物を作ろうと考えながらスタートしました。

イ:他の作物は何を育てられているのでしょうか。

永:例えば、ズッキーニは始めた年から同時進行で育て始めました。
他にも、キャベツ苗の仕事をいただいたのがきっかけで大型野菜の方も始めました。大型野菜ってのは、キャベツや白菜やレタスのことです。

新規就農者になって

イ:始めた時からうまくいってたのでしょうか。

永:最初はやっぱり苦労ばかりでした。その分、今年が勝負かなって思ってます。

イ:実際に始めてみて、苦労したことや、やっててよかったなと思うことは何でしょうか。

永:やっててよかったことは、作物ができて、お客様に「いいものだね」って褒めてもらえたことです。
そう言ってもらえた時は、やっぱり嬉しいですね。「もっといいものを作ろう」という気持ちになります。

苦労したことは、周りに相談できる人が少なかったことです。
他の新規就農者の人は、周りに農家さんがいたり、親がやっている農園を継ぐ人が多かったので、余計にそう感じました。

イ:教えてくれる人がいなかったのでしょうか。

永:普及所の方とか農協の方など、教えてくれる場所はありましたが、農家さんとして教えてくれる師匠的な人はいませんでした。
手伝っていたところの農家さんもナスは詳しくても、他の作物は詳しくなかったので、新しく始めた作物については特に手探りでした。
そこで、なんとか知っている人を探して頼っていくのは苦労しました。

新規就農だからこその視点

イ:新規就農だからこそ気付けたことは何かありますか。

永:長く続けている人だと、自分のやり方があるので、既存のやり方を崩せない時があると思いますが、自分は新しいからこその柔軟性を持つようにしています。
いいと思ったものは取り入れてみて、それで良ければ続けるし、悪ければ戻すようにしています。
そうすることで、少しずつ自分のやり方が確立していくんだろうなと思います。

イ:確かに。他の先輩農家さんは成功事例があることで挑戦する機会も少なくなる場合はありますよね。

永:でも、やり方とかも計算された上で決まっているのだと思います。
同じやり方でも、失敗することもありますし。同じ量の肥料をあげても、違う土地だと土の質も違ったりするので、うまくいかないことがあります。
特に、初めて作る野菜は、自分でも理解できていなかったりします。場所によっても全然やり方が違ったりとかもします。

農家自らが出張する直売所

イ:知り合いのお店の駐車場で直売所もしていると伺ったのですが。聞かせていただけないでしょうか。

永:高崎にあるお店の駐車場を借りて出張で直売所をしてます。
1年前から準備をしてきて、やっと準備が整って、11月から販売を始めたところです。
少しずつ馴染んできたので、夏などの旬の野菜がピークの時はもっと種類を持っていこうと考えています。

イ:なぜ始めようと思ったのでしょうか。

永:直売所とかスーパーで販売をするとなった場合も「本当は作った人の顔が見えた方が安心できるのでは」というイメージがあったので、自分でも販売してみよう!と思うようになったのがきっかけです。
そこで、たまたま後輩が「午前中はお店が営業していないから、使っていいよ」と声をかけてくれて、駐車場の持ち主とも話をつけてくれました。

イ:作物を育てるだけでも大変なのにすごいですね。良い意味で特殊ですし、タフですよね。

永:直売所をひらいている時間は畑がいじれなくなりますし、良いことばかりではないですが、周りで同じようなことをやっている人は少ないので、挑戦してみようという気持ちがありました。

イ:今のような冬の時期でも直販を目当てに来てくれる人はいるのでしょうか。

永:結構います。
町場のスーパーでは買えない値段で出すことで、喜んでもらえます。
ただ継続的にって考えると、生産から売るまでを一人でやるのは限界があるので、忙しい時期は人に手伝ってもらいながら、少しでも続けていければと思っています。

地元の好きなところと課題

イ:地元の好きなところはどんなところでしょうか。

永:人が優しいところかな。

イ:どんな時に優しいと思うのでしょうか。

永:地元としての繋がりがあるから気楽に話せるし。人数が少ないからこそ、お互いが昔から知っていて、先輩方もダメな時はちゃんとダメって叱ってくれます。叱ってくれることも含めて優しいところが好きです。

イ:永田さんの考える町の展望や課題は何かありますか。

永:農業目線になりますが、もっと農業に力を入れてもいいんじゃないかと思うところはあります。
別に補助金が欲しいとかではありませんよ。
例えば、新規就農の人が入ってきた時に、その人が諦めてしまうことって結構あります。
自分と同期で入った人にもいました。
自分が身近に見てきたから特に思いますが、新しく始める人へのサポートのような取り組みがもっと充実するといいなと思います。
他の組織とも連携を取ってサポートしていくことはもっと出来るのかなと思っています。

イ:確かに。失敗はつきものですからね。

永:そこで、ちゃんとサポートしてくれる組織があれば良いなと思います。

今後の展望

イ:永田さんの考える町に貢献できることは何かあるでしょうか。
東地区で新規就農者として頑張ってるって時点で、十分町に貢献してるとも言えますが。

永:今の状態だと野菜でしか貢献できないですからね。いいものを作って、東吾妻町ブランドを作れたらいいなとは思っています。それが町のアピールに繋がればいいなと。
それに、安全そうに見えても、日本に住む以上は、いつどうなるかわからない。
そんな、もしもの食料とかにも貢献できればな。ってのは結構考えますね。

イ:確かに。人が生きる上で食べ物はなくてはならないですからね。

永:食べ物という話では、岡崎は水に恵まれていると思います。
各畑と田んぼに一個ずつ農業用水が付いていて、蛇口をひねれば当たり前のように農業用水を使うことが出来ます。

イ:こうしていつでも水が出ることは、なかなか当たり前のことじゃないですよね。

イ:あれは、タラの芽でしょうか。

永:そうです。これは路地物でまだ切ってない物です。

イ:タラの芽は根みたいなのを植えると思っていました。

永:普通はそうですね。しかし、うちでは苗を植えるようにしています。
ハウスの中でまずは苗に育てています。

イ:そっちの方がいいのでしょうか。

永:失敗が少ないかなと思っています。根っこだけでは、生えてくるところと生えないところが出てきてしまいますし。

イ:前職の種苗屋としてのスキルが生かされてますね。

永:その辺はあるかもしれません。
例えば、大型野菜はポットを使うけど普通は使わないような芋とかもポットで芽を出してから植えるようにしています。

イ:色々試されているのですね。

永:毎年ちょっとずつ実験みたいなのはしていて、少しずつ作物の成果に繋がることを見つけるたびに「これでいいんだ」という納得感があります。
こうやって改めて考えると、やはり育苗が好きなのかもしれませんね。
もちろん大変な時も多いですが、その分楽しいことも沢山ありますから。

【 永田農園 】

<住所> 群馬県吾妻郡東吾妻町岡崎

<Facebook> https://www.facebook.com/yuuya.nagata.35

 

Facebookでシェアする twitterで呟く
MY ROCK TOWN 東吾妻