ロックなバショ

「朝陽堂を“古いものと新しいものがつながり、ひろがる、みんなの場所”にしたい!」

2021.08.10

朝陽堂の山口さん

「例えば芸術に触れたくても、美術館へ行くのは敷居が高くて、一生行かない人もいるじゃないですか。でもそれってもったいないですよね。朝陽堂を気軽に芸術や文学に触れることが出来るような場所にしたいんです。」

もの静かな雰囲気とは裏腹に、力強い言葉で語るのは「朝陽堂」のオーナーである山口純音さん。

朝陽堂は、築244年の古蔵をリノベーションして作った「古本・雑貨・ギャラリー」のお店です。
山口さんはそんな朝陽堂のオーナーであり、主婦であり、二児の母親でもあります。

朝陽堂の店内

山口さんがご主人様と共に建物のリノベーションを始めて、お店を開くまでにかかった期間はなんと「7年!」

今でこそ「おしゃれで綺麗な雑貨屋」として、県外からも沢山のお客様がいらっしゃいますが、江戸時代から残る建物を作り変えるのは、想像以上に過酷だったとのこと・・・。

朝陽堂は元々、ご主人のおばあさまが運営されていた本屋さんでした。しかし、お店を閉じてからは全くの手つかず状態で、当時の商品がずっと残ったままになっていたそうです。

そんな状態から、山口さんのチャレンジはスタートしました。果たして山口さんは、主婦として、二児の母親として、また商売経験ゼロの状態から、どんな想いで朝陽堂を作られたのでしょうか?

お話を聞いてみると、そこには「運命」としか言いようがないドラマがありました・・・。

お店づくりのきっかけは「築244年の建物を生かしたい」

※山:山口さん イ:インタビュアー

山「最初はここで、商売を始める気なんてほとんど無かったんです。」

イ「え、そうなんですか?じゃあなぜお店を作ったんですか?」

山「ここは歴史のある建物なので、できるだけ残したいという想いがあって。それなら建物を維持するために誰かが住んだ方が良いよね、って夫と話したんです。それに子供達の事を考えても、そのままにしておけないじゃないですか(笑)」

イ「なるほど、お子さんの事も考えられたんですね。」

山「それで掃除を始めたんですが、とにかく物が多くてどこから手をつけて良いか分からなくて・・・最初はこんな感じだったんです。」

そういって見せてくれた写真がこちら(朝陽堂インスタグラムより)

朝陽堂の歴史

 

朝陽堂の歴史

※山積みになった昔の本や備品

山「本屋だった時の商品がそのまま残ってるし、老朽化で古くなった部分も沢山あるし、200年越しの埃が溜まっていたりで、もの凄いことになってました。」

イ「たしかに、今とは全然違いますね!」

山「夫と一緒に時間をかけて何とか進めて、せっかくやり始めたからには2階もやろう!って感じで少しずつ片付けをしたんです。そうしたら興味深いものを見つけたんですよ。」

イ「一体何を見つけたんですか?」

山「それが、うちの家系や原町(地域名)に関する資料だったんです。しかも、そんな資料を見ていて分かったことがあって。」

イ「それはどんな事?」

山「実は夫のひいひいおじいさんが、地元ではちょっとした有名人なんですね。教育を良くするために、仲間と小学校を誘致したり、鉄道を作ったり、牧場をつくったり・・・地域の教科書にも載ってるんですよ(笑)」

イ「それはすごいですね!」

山「そういった資料を読んでいたら、だんだん家族も知らなかったことが分かるのが楽しくなってきて。次第に『朝陽堂を再開することが自分たちの使命かもしれない』って思うようになったんです。それに、せっかくここまで片付けをしたんだから何かしなくちゃ!とも思いました(笑)それが朝陽堂を作るきっかけですね。」

イ「うーん、なんか大きな運命を感じますね。」

山「大袈裟ですけどね・・・でも、専門家の方に見てもらったら、その資料には価値があるらしいんです。」

準備期間7年!朝陽堂は「再会の場」

イ「まさか、こんなオシャレな空間にそんな経緯があったとは。」

山「おばあさんの代では書店だったんですが、当時はこの古めかしい建物が嫌だったらしいです。おじいさんも建物の梁をわざわざ隠してしまうくらいだったので。少し前なら『古いものばっかりじゃん』って思われたかもしれませんね。」

イ「今だからこそ、その古さが『良いもの』として認識されたんですね。」

山「そうかもしれません。当時の物を、全部捨てずに残してあったのが逆に良かったんですかね。ちなみにあそこにある真空管のラジオ、今でも鳴るんですよ。」

朝陽堂の真空管ラジオ

※時代を感じる真空管ラジオ。今でも受信するとのこと。

イ「ではお店を始めるまでに、1番大変なことは何でしたか?」

山「そうですね・・・子育てもあったけど、片付けの展望が見えなかったのが1番辛かったです。
専門的な修理は、地元で腕の良い大工さんに工事を依頼したんですが、それでも本当に綺麗になるかどうか分からないじゃないですか。このまま続けていて良いのかな?って。
そんな先行きが見えない事が1番辛かったですね・・・。」

朝陽堂の改築

朝陽堂の改築

※7年かけて作った朝陽堂の改築プロセス

山「そうしたら、結局お店を開くまでに7年もかかりました(笑)」

イ「え、7年ですか!?そのモチベーションはどこからやってくるんですか?」

山「私はクリスチャンということもあって、大変なことがあっても『これはもしかしたら、神様が導いてくれているのかもしれない。それなら何とかうまくいくんじゃないか?』って楽観的に思えたんです。
たしかに何度も心が折れそうになったけど・・・自分がここにお嫁に来たことには意味があると思っています。」

イ「その考え方はとても興味深いですね。なかなかこの環境で続けられる人はいないと思います。」

山「大変だったんですが、おかげさまで応援してくれる人は少しずつ増えています。『建物の歴史に興味がある!』『空間が落ち着く!』と言ってくれる人がいたり、中には『悩みがあるから来ました』という人が来てくれたこともありますね。」

イ「みんなの癒しの空間になっているんですね!」

山「だから、そろそろコーヒーくらい出せるようにしたいと思ってます(笑)そのうち絵画教室も開きたいですし・・・ここはレンタルスペースとしても貸し出しているんですが、今度2階でヨガ教室を開催するんですよ。」

朝陽堂のレンタルスペース

※2階ではヨガ教室なども開かれています。

イ「では、お店を開いてみて1番嬉しかったことはなんですか?」

山「書店時代のお客さんが来てくれて『懐かしい!30年ぶりに来ました。昔ここで本を買ったんだよ!』って言ってくれたことです。来てくれた人同士で『えー、何でここにいるの!?」なんて、奇跡の再会された方もいましたね。」

イ「ここは再会の場でもあるんですね!素敵です。」

山「これからも色んな人に来て欲しいんです。赤ちゃん連れの家族でも、おじいさんもおばあさんも、誰でもくつろげる場にしたい。」

イ「山口さんの話を聞いていると、すごく視点が面白いと感じます。今まで商売の経験はあったんですか?」

山「いえ、それが全くありません。でも逆に何も知らないからこそ、新鮮な視点で見れるのかもしれませんね。
おかげさまで、心を込めて行動すれば沢山の人に通じるんだ!と思えるようになりました。」

東吾妻に対しての想い

イ「貴重な話をありがとうございます!では最後に東吾妻に対する想いを聞かせてください。」

山「私は元から、住むなら地方だなと思っていました。最初は山形に住みたかったんですよ(笑)
でもせっかく東吾妻に来たんだから、東吾妻を好きになりたいな、と思って役場に顔を出してみたりしました。」

イ「これもご縁なんですかね。」

山「それで改めて思ったんですが、正直『東吾妻にはこれ!』という物がないんですよ・・・でも、よく考えたらそれが普通かなと思うんです。
別に、これ!という物にまとまる必要もないんじゃないかなって。多様性って言うんでしょうか。」

イ「みんな違って、それで良いと?」

山「はい、ここは外国から来ている人も多くて、色んな人がいます。だから、わざわざ『〇〇の町』にしなくても良いんじゃないかって。むしろ、それぞれがやりたい事をやっているよ!という町も良いじゃないですか!・・・まだうまく言えないんですけどね。」

イ「個々が輝ける町、って良いですね。」

山「最近、東吾妻に新しいお店が増えてきているんです。そう言えば、この間来たお客様が『東吾妻は今までずっと通り過ぎてたけど、これからは外せない場所になった!』って言ってくれました。あれは嬉しかったですね。」

イ「すごい、朝陽堂がこの町を変えていってますね!」

山「朝陽堂を通じて、訪れた人の世界が広がったら良いですね。」

朝陽堂のレジ

インタビューを終えて・・・

インタビューを行う前、山口さんの第一印象は「もの静かな方」でした。

しかし話を聞くにつれ、山口さんから発せられる言葉には不思議な「力強さ」と「輝き」を纏っていることに気づきました。
この朝陽堂から醸し出される「癒し」の雰囲気は、建物が長年培ってきた記憶と「山口さんの想い」がリンクした結果、生まれるものなのかもしれません。

・おしゃれな小物や雑貨が好き!
・落ち着いた空間でゆっくりしたい
・日頃のモヤモヤした気持ちを癒したい
・山口さんとおしゃべりしてみたい
・歴史的な建造物が好き!

という方は「朝陽堂」にお越しください。
きっとあなたも歴史ある建物と、山口さんの持つ魅力に惹かれることでしょう・・・。

朝陽堂に関する情報はこちらから!
朝陽堂のインスタグラムへ

(記事:岩下 知史)

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MY ROCK TOWN 東吾妻