2021.08.20
「子供達が大きくなった時に『東吾妻には何もない・・・』となってしまうのは寂しいじゃないですか。そうならないような町にしたいですよね。そのためには若い人が中心になって、仕事をしやすい環境を作る必要があると思っています。」
そう語ってくれたのは創業から50年間、地元の養殖業を盛り上げている「あづま養魚場」取締役の池田駿介さん。その柔軟な視点から様々な取り組みをされています。
しかし2代目経営者として、これまで色々な葛藤や苦労があったそうです・・・
・従業員に対する思い
・町づくりに対する思い
・2代目としての苦労
・子供達の未来に対する思い
次世代の経営者が描いているビジョンとは?池田さんにインタビューしてきました
※池:池田さん イ:インタビュアー
イ「まずお仕事をする上で、1番大切にしていることを教えてください。」
池「従業員のモチベーションを上げることです。」
イ「おー即答ですね!具体的に何をされているんですか?」
池「まずは何でも伝えること、ですかね。自分のことも隠さず、出来るだけオープンにしています。」
イ「どんな事を伝えるんですか?」
池「例えば、僕が2階で仕事しているとするじゃないですか。そうすると従業員からは『駿介さん、サボってる』って言われるんです(笑)
だから、自分が何をしているのか?などもちゃんと説明するようにしています。」
イ「なるほど」
池「あと現在はコロナ渦で従業員には助成金を使って、給料を払いながら休みを取ってもらっているんですね。そういった背景も伝えて『なぜ休みなのに給料が出るのか?』といったことも説明しています。」
イ「そんな事まで説明されているんですね!」
池「社会の仕組みや経済の仕組みも教えながら、従業員のモチベーションを上げるようにしています。恋愛と一緒で、人って言わないと分からないし言われないと分からないですから。」
イ「普通の経営者だったら、そこまでやりたくなさそうですが・・・」
池「教えたほうがメリットがあるんです。だから、自分が大変な時には『俺だって大変なんだ!』ってちゃんと伝えますよ(笑)
僕は経営者だからってカッコつける必要は無いと思ってます。」
イ「それで従業員さんは変わりましたか?」
池「細かいコミュニケーションをしっかり取る事で、従業員も自分の事を理解してくれるようになりましたね。恐らく経営者と従業員って、立場が違うから完全に理解し合うことは無いと思うんです。
でも、こちらの意図が7割でも伝わってくれたらそれで良いですよね。」
イ「それが池田さんの信念なんですね。」
池「この職場は他と比べてもアットホームだと思います。だから従業員にはいつも『こんなラクな仕事場は他にないぞ!』って言ってますよ。」
※大自然の中にある「あづま養魚場」
イ「そういえば、池田さんは『東吾妻の町づくりプロジェクト』にも参加されていますよね?どうして参加しようと思ったんですか?」
池「普段うちの魚は地元の旅館に提供しています。だから、ある意味でうちの仕事は観光業にも紐づいていると考えているんですね。そんな観点から町を盛り上げる活動は必要だと思っています。」
イ「それでプロジェクトに参加されようと?」
池「ちなみに・・・昔は町会議員に立候補しようとしていた時期もあったんですよ。結局は先代に反対されてしませんでしたが。元から町づくりには興味があったんですね。」
イ「へー、そんな経緯があったとは!」
池「あと自分に子供が生まれてからは『子供が出て行きたくなるような町にはしたくない!』って思ったんです。そうなったら寂しいですよね?」
イ「それは嫌ですね。そうならないために、何をすれば良いと考えますか?」
池「僕は若い人の力が重要だと思っています。若い子が魅力を感じないと、町は良くなっていかないんです。だから、若い人が集まれる場所・・・例えば、僕も含めて町民達が集まって町についてディスカッションできるような場所、昼は憩いの場で、夜は秘密の集会所・・・みたいな。そんな場所があれば良いなと思っています。」
イ「そんな場所を作る予定は無いんですか??」
池「前からハンバーガーショップを開けないか?とは考えていました。夜はお酒メインのバーにして、地元の人が集まれる場所にしたいって。名物の『デビルズタンバーガー』も使えますし。」
イ「若い人が活躍できる町になったら良いですね!」
池「僕は決して『この町が素晴らしい!』とは思っていないんですね(笑)
ただ地元は好きだし、もっと外から人を呼べないか?とはずっと考えてます。群馬は元から観光地ですし、町の良さをPRする方法はいくらでもあると思っています。」
※東吾妻のプロジェクトとして生まれた「デビルズタンバーガー」
写真は「あづま養魚場」でしか食べられない、群馬の最高級ニジマスを使ったオリジナルハンバーガ(要事前予約)
イ「お仕事を継ごうと思ったきっかけは何だったんですか?」
池「この仕事は、元々好きで始めたわけではありませんでした。親のスネをかじるのもカッコ悪いと思ってましたし。」
イ「そこからどんな心境の変化があったんですか?」
池「学生時代に自分でお金を貯めて海外留学へ行ってたんですが、帰国の時期に3.11の東日本大震災があって・・・状況が一変したんです。それで結局は、親のためと思ってこの仕事を始めました。
もとから自分で会社を立ち上げたい!という思いはありましたし、いつか自分の好きなように経営できるようになるなら良いかなと。」
イ「これまでお仕事をされる中で、1番大変だった出来事は何ですか?」
池「やはり2代目としての葛藤や苦労はありますね・・・先代の考えを尊重しながらも自分の意思を持たないといけないので。社長と従業員なのか?親と子なのか?区別がつかなくなる時があるので、喧嘩になることもよくありました。
イ「なるほど、2代目経営者ならではの悩みがありそうですね・・・」
池「でもこれは僕と従業員の関係性でも一緒だと思っています。僕が自分で考えて動くように、従業員には『上に言われたから動くのではなく、自分の考えがあるなら好きなようにやってくれ!』と伝えています。そうやって職場を楽しい場所にしたいですね。」
イ「では逆にこれまで1番嬉しかったことは何ですか?」
池「正直言うと、今はまだありません(笑)」
イ「えー、そうなんですか!?」
池「でも経営者として『こうしたら人が付いてきてくれる』とか考えるのは好きなんです。だからこのまま経営を続けて、結果が出た時は嬉しいと思えるでしょうね。
イ「池田さんのその原動力は、一体どこから来るんですか?」
池「多分大したことはないんですが・・・強いていうなら「いつも自分がラクになるように」と考えてます(笑)でもラクをするには、まず努力が必要じゃないですか?
確かに、仕事頑張らないで、ぐーたらしてたら楽だとは思います。でも、そのままお金もなくて、体が動かなくなったら大変ですよ。」
イ「努力の上に作られるラクを求めているんですね。」
池「ちゃんと努力もして、将来『池田さんだったら助けるよ!』って言ってくれる人がいたら嬉しいじゃないですか。そのために今頑張っていますね。」
イ「では池田さんが仕事に関係なく、最もときめく瞬間はいつですか?」
池「子供です!子供一色!」
イ「あー!双子のお子さんが生まれたんですよね?」
池「はい。もう子供が可愛すぎて・・・そこが生きがいです。でもだからこそ、東吾妻を子供が好きでいられる町にしたいんですよ。」
イ「では最後に、今日のメッセージを1番伝えたいのは誰ですか?」
池「・・・全宇宙です(笑)」
イ「すごい!(笑)」
池「でも、まずは町民の方に自分の考えを知ってもらったら嬉しいですね。
まあ、県外の方にも来て欲しいし、外国の方も来て欲しい・・・やっぱ全部かな。
そう言えば少し前にInstagramを始めたんですが、そのおかげでこれまで来なかったお客様が来てくれるようになったんです。」
イ「僕も池田さんの想いが東吾妻を始め、全宇宙に伝わるように頑張りますね!」
池「面白おかしく伝えてください(笑)」
※Instagramでは、あづま養魚場の様子が毎日更新されています。
インタビューを通じて、池田さんからは終始「言葉にできない魅力」を感じました。
あえて言葉にするなら「ピュア」「純粋」「裏表がない」「正直」といった表現になるでしょうか。
経営者は一歩間違えれば傲慢な存在にもなり得ます・・・ましてや2代目とあれば、そうなっても何ら不思議ではありません。そんな中で池田さんからは、2代目経営者ではなく「起業家」としての一貫した気概を感じました。
ご本人は「自分がラクな状態でいたいだけ」と笑いながら語ってくれましたが、その真意は経営者として、一家の大黒柱として「責任を果たすこと」にあると個人的に理解しています。
「自分と周りに対して正直にいる」
そんな池田さんのあり方が、今後の地元を支えるリーダーとして、必要不可欠な要素なのかもしれません。
そんな池田さんが経営されている「あづま養魚場」はファミリーに加え、最近ではカップルの来客も増えているとのこと。
その様子はInstagramで公開中!気になったら是非こちらをご覧ください。
※個人的に好きなのは「魚屋の筋トレシリーズ」です。
<あづま養魚場>
吾妻郡東吾妻町大字箱島1002
電話:0279-59-3621
(記事:岩下 知史)